「会いに行ける科学者フェス」では、講演、シンポジウム、ハンズオン、ステージ、シアター、オンライン企画のほかに、多くの科学者や科学に関わる人が、「一般ポスター発表」と「展示(御協賛いただいた企業・大学・プロジェクト等による)」を行います。そういった発表のいくつかをご紹介します。
第2弾はこちら。
展示 生命を支えるタンパク質はカタチがいのちータンパク質科学の基礎から最新の話題までー
田口英樹(東京工業大学 科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センター)
タンパク質というと肉や卵の「タンパク質」を連想するかもしれませんが、私たちを含むあらゆる生命が生きていけるのは、何千、何万種類というタンパク質が細胞の中ではたらいているおかげです。まだ不思議だらけのタンパク質の世界の秘密を解き明かすには、生物学だけでなく、化学、物理、情報科学、工学など分野を横断した総合的な研究が必要となっています。本展示では、タンパク質にちなんだパズルやおもちゃ、緑に光るタンパク質(GFP)などを展示した上でタンパク質科学の基礎を学んでもらえます。タンパク質科学を進めている現場の大学院生や研究者との対話を楽しんでください。
ポスター 分子マップが導く脳の冒険
高野哲也(慶應義塾大学医学部生理学(神経生理)教室)
私たちの脳は、感情や記憶、意識の中核をなす非常に複雑でミステリアスな組織です。現代の最先端AI技術でさえ、脳の働きを完全に再現することはできません。脳は860億を超える神経細胞とグリア細胞で構成され、私たちが体験するすべての出来事や情報を巧みに処理します。近年の研究によって、これら脳の情報処理には、細胞内の分子(特にタンパク質)の活動や連携が密接に関連していることがわかってきました。つまり、分子の位置情報や振る舞いを読み解くことで、私たちが何を感じ、何を考えているのか、その思考や感情さえも理解できる可能性があります。
本研究では、脳の神秘を解き明かす鍵として、「分子マップ」を読み解くための最新の研究を紹介します。この分子マップの中を冒険することで、脳がどのようにして動き、私たちの思考や感情がどのように生まれるのか、その謎を探求します。また、これらの分子マップは、より人間らしい意識や想像力を有する人工知能(AI)の開発、そして将来的に多くの障害者を支援する脳コンピューターインタフェース(BCI)の開発にも繋がることが期待されています。さらに、脳の多くの病気、例えばアルツハイマー病、発達障害やうつ病などの治療法の開発にも貢献し、病気の原因や進行を分子レベルで理解することで、新しい治療法の開発に繋がる手がかりを得ることができます。